難病指定
−患者の闘病支援目的ー
こども救急箱(205)
ある病気が、「新しく難病に指定された」というニュースが報道されることがあります。2015
年に国の難病指定制度が更新され、「難病」と合わせて、子どもの病気の「小児慢性特定疾
病」の医療費助成制度の対象が拡大されました。通称「小慢」と呼ばれています。
成人を含めこれらの制度の対象となる病気は、難病という言葉のイメージのとおり、治りにく
い病気のことです。しかし、必ずしも重い病気を示すわけではありません。特に高い薬を使わ
なければならない病気や、長い時間の闘病が必要な慢性に経過する病気を対象にしていま
す。患者さんや家族の経済的負担を軽減する目的で設立された制度です。
例えば、乳幼児がかかる細菌性髄膜炎やインフルエンザ脳症などは、数時間の単位で病
気が進行し、時に命をとられる病気です。しかし急性疾患なので、この制度では医療費助成
の対象になっていません。毎年、全国で150人以上の子どもが亡くなっている「乳幼児突然
死症候群」も指定されていません。
制度の目的が「重い病気」の指定ではなく、病気の患者さんの「闘病支援」だからです。した
がって、国によって難病に指定される病気は、命を脅かす重症の病気から、入院の必要がな
い病気まで、非常に幅が広いことを知っておいてほしいと思います。
何よりも重要なことは、その病気の本来の特徴を知り、どのように対応し、本来あるべき日
常生活を取り戻すことを医療者と相談することだと思います。病名は医療制度を効率的に運
営するために、患者さんが付ける名札であると理解してください。時代とともに病名は変わる
こともあるし、治療は医学とともに日々進化しています。
こども医療ネットワーク理事長 河野 嘉文
(鹿児島大学病院小児医療センター)