川崎病
―新しい治療法に期待―
こども救急箱(208)
川崎病は、川崎富作先生が1967年、世界で初めて報告した子ども特有の病気です。日本
では、年間1万人以上の子どもが発症しています。また、合併症として心臓の冠動脈にこぶ
ができることが問題となっています。患児の1%程度に重症の冠動脈瘤後遺症がみられ、そ
の後の日常生活に大きく影響してしまうことになります。
したがって、川崎病の治療の一番の目標は、冠動脈瘤ができないようにすることです。一般
的な治療は、点滴による免疫グロブリンと内服のアスピリンです。免疫グロブリン治療によっ
て、冠動脈瘤が発生する頻度は下がりましたが、まだ完全ではありません。免疫グロブリンが
効きにくい例が20%程度存在し、冠動脈後遺症が多くみられます。
2012年、入院時に検査結果などから免疫グロブリンに反応しにくいことが予測される重症
例を選び出して、ステロイド薬を併用する治療をすることで、冠動脈瘤の発生を少なくできるこ
とが報告されました。
その報告を踏まえて、現在は一般的な治療をしながら、重症と予測される場合には、ステロ
イドを併用するように変わってきています。この治療の変更で、冠動脈後遺症がさらに減るこ
とが期待されています。
ただし、いったん川崎病で冠動脈異常が生じた場合には、ステロイド薬は、冠動脈異常を悪
化させる可能性があるという問題点を抱えています。そこでステロイドに代わり、免疫をおさえ
る他の薬であるシクロスポリンを使う研究も始まっています。
それ以外にも、日本をはじめ、世界中で川崎病に関する研究が続けられています。今後、
冠動脈瘤の発生がさらに減少する治療法が開発されると思います。
こども医療ネットワーク会員
益田 君教
(鹿児島市立病院小児科)