小児がん@

 

こども救急箱(210

 わが国では、毎年5000人前後のこども(15歳未満)が亡くなりますが、10%は小児がん

が原因です。成人のがん死亡数に比べればはるかに少ないですが、こどもにも「がん」はあり

ます。

 小児がんで多いのは、白血病と脳腫瘍で、それぞれ30%を占めます。40%を神経芽腫、

骨肉腫などさまざまな種類のがんが、それぞれ2〜5%程度の割合で占めています。白血病

や脳腫瘍にもたくさんの種類がありますから、小児がんは同じ病気を持つこどもが少なく、病

気になった時の症状もさまざまです。

 白血病でも最初の症状は、発熱、元気がない、食欲がないなど一般的な風邪症状が多いよ

うです。医療機関を受診するべき症状は、出血と骨の痛みです。具体的には鼻血が止まらな

い、体に紫斑や点状出血がある、腰や肩の関節を痛がるなどです。

 頭痛があると脳腫瘍が心配で、コンピューター断層撮影(CT)検査を希望して受診する人が

いますが、頭痛だけが脳腫瘍の症状なことは極めて少ないです。腫瘍が脳や神経を圧迫す

ることで、めまい、意識障害、けいれん、ふらふら歩くなどの症状が出るので、これらの症状

がある時には、頭痛がなくても受診する価値があると思います。

 頭痛と嘔吐は頭蓋内の病変を示すと言われますが、小児では急性胃腸炎(いわゆる嘔吐

下痢症)による場合が多いので、嘔吐だけですぐに脳腫瘍を考えることはありません。他に症

状がなく、嘔吐だけが数日以上続く場合は脳腫瘍も疑います。

 小児がんの治療成績には、そのがんの性質(薬の効きやすさ、手術のしやすさ)が最も重

要な影響を与えます。早期発見は必ずしも重要ではありませんので、何も症状がない時に恐

れる必要はないでしょう。

                                                                                       

 

こども医療ネットワーク会員

岡本康裕(鹿児島大学病院小児診療センター)