小児がんA
こども救急箱(211)
前回紹介した白血病と脳腫瘍以外の小児がん患者で多い症状は、腫れと痛みです。
がんは腫瘍とも呼ばれますが、白血病以外のがんは「腫れもの」ですから、腫れという症状
は重要です。最初は症状がなく診察してもわかりません。しかし、大きくなると健診の触診で
容易に見つかり、小さな子どもは着替えや入浴時に母親が気付くこともあります。気をつけた
いのは腫れを親に隠す傾向がある年長児です。中学生などは大きく腫れて隠せなくなってか
ら見つかることがあります。
神経芽腫、肝芽腫、ウイルムス腫瘍など腹部から発生する腫瘍では、おなかが大きく腫れ
て見えることが多いようです。筋肉や骨のがんでは、手足、関節、あるいは顔が腫れることが
あります。
もう一つの症状の痛みは、腫瘍の発生する場所により異なります。おなかの腫瘍は大きくな
って神経を圧迫するまで痛みません。体の表面にあるリンパ節は大きくなっても痛くならず、
硬くなるだけです。痛みを伴うリンパ節の腫れはがんではなく、細菌やウイルスが感染して起
きる炎症であることが多いようです。
骨や骨に近い場所にできるがんは痛みを感じやすいですが、大きくなるにつれて痛みが強
くなるのではなく、大きくなっているのに一時的に痛みがやわらぎ、時には消えることもありま
す。
骨の痛みが繰り返す場合は、医療機関を受診すべきです。どこが痛いのかはっきり言えな
い子どもは、手を使わない(おもちゃで遊ばない)とか、歩くのを嫌がるとか、一定の姿勢をと
らないので、お母さんはすぐに気付くと思います。
手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤)を組み合わせた治療により、小児がんの7割以上
が治るようになっています。
こども医療ネットワーク会員
岡本 康裕(鹿児島大学病院小児診療センター)