人口減少

―子どもの数は国の力―

 

こども救急箱(212

 年頭に2015年の出生数が100万8千人で、5年ぶりに前年を上回ったと報道されました。

少しだけ回復したようですが、200万人を超えていた1970年頃の半分です。一組の夫婦の

間に何人子どもが生まれるかを示す合計特殊出生率という統計があります。2・07以上でな

いと人口が維持できないのですが、現在1・42程度です。まだまだ人口減少は続くことが予

測されます。

 お隣の中国が一人っ子政策を中止したことで分かるように、子どもの数は国の経済力につ

ながり、国際社会の中では国力そのものです。市町村の大きさを語るときにも、人口が指標

になります。日本に100万人都市はいくつあるかなどはクイズでよく見かけますね。自治体の

力も、人口に比例するわけです。それで「子どもを産み育てやすい町」を掲げる自治体が数多

くあります。

 その一方で、新生児を担当する医師がよく経験しますが、社会的に望まれない妊娠・出産

があることも事実です。「子どもは自分の親や家庭を選べない」と言われますが、生まれてき

た赤ちゃんを社会全体で歓迎し、成長と発達を支援する必要があると思います。

 生まれてきた赤ちゃんが、予防できるはずの事故や病気で亡くなることがないよう、われわ

れ大人が気をつけなければなりません。予防接種を受けることやチャイルドシートを正しく装

着することはもちろん、乳幼児期には気をつけなければならないことがいっぱいあります。

 お母さんは授乳をはじめ赤ちゃんの面倒を見ることで精一杯ですから、周囲のみんなでサ

ポートしましょう。サポートが少なかった1960年頃までは、たくさんの乳幼児が事故や病気で

亡くなっていたことを知っておきたいものです。

 

こども医療ネットワーク理事長

河野 嘉文

(鹿児島大学病院小児医療センター)