インフルエンザワクチン
―脳症防止にも接種を―
こども救急箱(216)
インフルエンザワクチンの効果には、いろいろな報告や意見があります。鹿児島市立病院
小児科にはこの冬も、インフルエンザにかかってけいれんや異常言動などが起きた多くの救
急搬送がありました。残念ながら、インフルエンザ脳症の子どもも含まれていました。来院し
た子どものほとんどが、インフルエンザワクチンの接種をしていませんでした。
流行株は、2009年に新型インフルエンザとして流行したA型株です。09年は重症肺炎の
報告が多かったのですが、今回は脳と関係する症状の子どもばかりでした。
インフルエンザワクチンの有効性については意見が分かれる場合もあります。その中でも
信頼できる報告によると、ワクチン株と流行株が一致した場合の有効率は、A型が80%前後、
B型が50%前後と言われています。ワクチンを接種せずにA型にかかった人の80%は、ワ
クチンを接種していれば発病しなかったという意味です。
今季はワクチン株と流行株が一致しているので、ワクチン接種者の入院はほとんどありま
せん。入院者の多さはワクチン接種率の低下を推測させます。
たしかに、1歳から6歳未満の有効率は20〜30%と報告されています。しかし、この年齢
はインフルエンザ脳症をもっとも起こしやすい年齢で、ワクチン接種により発症が予防できれ
ば、インフルエンザ脳症の危険性を下げることができます。
A型インフルエンザはワクチンの有効性が高いので、入院が必要となるような症状を防ぐた
めに、ぜひ毎年接種してください。脳症の危険性が高く、ワクチンの有効性の低い1歳から6
歳未満の子どものいる家庭では、ワクチン効果の高い家族がワクチン接種をすることがより
大事です。
こども医療ネットワーク会員
楠生 亮(鹿児島市立病院小児科)