酸蝕症さんしょくしょう

―酸性度高い飲料身近に―

 

こども救急箱(217

 酸蝕症さんしょくしょうとは、酸によって歯のエナメル質という一番外側の硬い部分が溶け

てしまう病気です。硬い歯を溶かしてしまうほど強い酸性のものが、簡単に口の中に入ってし

まうとは考えにくいかもしれません。これまで胃酸の逆流や、強い酸性の物質を扱う職業の人

に起こると言われていました。

 しかし現在は、子どもたちの身近に、強い酸性のものがたくさんあります。例えば、炭酸飲

料、乳酸菌飲料、スポーツドリンクです。炭酸飲料は酢と同じくらいの酸性度の高さです。これ

らを常習的にだらだら飲み続けると酸蝕症になります。

 治療は、溶けてなくなっている歯の量によって決まります。歯は外側からエナメル質、その

下に象牙質、内側に神経があります。エナメル質のごく浅い部分であれば、歯を削る治療の

必要はなく、フッ化物で再石灰化を促します。しかし、家で使う歯磨き粉に含まれるフッ素の濃

度は低く、より高い濃度のものを使用するため、定期的な歯科受診が不可欠です。

 象牙質まで達していれば、削って詰める、もしくはかぶせる方法で治療します。神経の近くま

で進み、痛みが出て、根っこに炎症が起きた場合は神経をとる治療になります。さらには歯を

抜かないといけない事態にまで至り、歯の寿命を縮めてしまうこともあります。

 最近はペットボトルを携帯して長時間飲み続けたり、哺乳瓶にスポーツドリンクを入れて飲

ませたりする光景を目にします。体に良いように思いますが、歯には最悪の状態です。熱が

出たり、おなかを壊したりした時以外は、できるだけ摂取を控えるか、時間と量を決めて飲ま

せましょう。

 また、飲食後の歯みがきやうがいをしっかりすることで、お口の中が長時間、酸性にならな

いようにしましょう。

 

こども医療ネットワーク会員

橋口 真紀子(鹿児島大学病院小児歯科)