乳幼児の春の感染症
―集団生活始まりリスク増―
こども救急箱(219)
小児科外来は、季節変動が大きいことで知られています。インフルエンザがはやる季節は
どのクリニックも混雑しますが、夏は患者は多くないというのが一般的でした。
私が小児科医になった20数年前も、5月は患者が少なかったように思います。ところが最
近は、5月は発熱を繰り返すという相談や入院が多く、比較的忙しい月に変わってきました。
感染症が多いのですが、インフルエンザのような特別な病気が流行しているわけではありま
せん。
多くの子どもたちは、新年度に環境の変化があります。4月から保育園や幼稚園のような集
団生活に入る子どもは、それ以前は熱を出すことはほとんどなく、集団生活開始後に発熱を
繰り返しています。原因検索のために検査をしますが、このような子どもたちに熱を繰り返す
ことを説明できる病気が見つかることは少ないです。集団生活することで繰り返し新しい感染
症をもらっていると考えられています。
3歳くらいまでの子が集団生活を始めると、感染症にかかる危険性が高まることは、欧米で
は以前から報告されています。日本も共働きが当たり前になり、10数年遅れで同じような状
態になっているのかもしれません。
感染の機会を少しでも減らし、重症化を防ぐために、予防接種はとても大事です。また熱の
原因が細菌感染の時は、処方された抗菌薬をしっかり飲むことが重要です。いろいろ工夫を
しても飲みにくい時は、かかりつけ医に相談してください。
どのような対策をしても、5月病のような乳幼児の春の感染症は防げない場合がありますが、
ある時期は仕方がないと割り切り、こじらせないように気をつけてあげてください。季節が変
われば発熱を繰り返すことはなくなります。
こども医療ネットワーク会員
楠生 亮(鹿児島市立病院小児科)