尿路感染症
―抗菌薬での治療有功―
こども救急箱(220)
乳幼児には、呼吸器症状(せき、鼻汁など)や消化器症状(嘔吐、下痢など)はなく、発熱と
機嫌が悪いということが時々あります。そのときは尿路感染症を疑います。
尿路感染症は、尿が作られて排せつされるまでの経路に細菌が入って起きる炎症です。大
きくは、腎臓や尿管(腎臓とぼうこう間の尿が流れる管)に感染する上部尿路感染症と、ぼうこ
うや尿道(ぼうこうと外陰部間の尿が流れる管)に感染する下部尿路感染症に分けられます。
発熱が顕著なのは、上部尿路感染症です。発熱以外に背中の痛み、脇腹の痛み、吐き気、
不快感などの症状がみられます。下部尿路感染症では通常発熱はなく、尿道炎で下腹部の
不快感があります。ぼうこう炎では排尿頻度の増加、排尿時の痛み、下腹部の不快感などの
症状がみられます。
小児の尿路感染症は、乳児期では男児に多く、幼児期以降は女児に多くみられます。原因
となるのは、通常は大腸菌をはじめとする腸管内にみられる細菌です。上部尿路感染症の場
合は、ぼうこうから細菌が逆流するものと、血液から感染するものとがあります。下部尿路感
染症は尿道口から細菌が逆流するものがほとんどです。
正確な診断をするには、尿検査で尿中の白血球の増加を確認し、尿の細菌培養検査で原
因菌を証明することが必要です。治療は、抗菌薬が有効です。特に乳児の場合には重症化
する恐れがありますので、入院治療が必要となることもあります。
尿路感染症は繰り返す傾向があります。特に発症後6カ月以内が多く、この期間に発熱し
た場合は尿検査をしておきたいです。尿路感染症を繰り返す場合、腎臓機能を悪化させない
ために、専門機関で特別な検査を受けた方がいいでしょう。
こども医療ネットワーク会員
永迫 博信(帖佐こどもクリニック院長)