指や下唇を吸う癖
―歯並びに影響、対応慎重に―
こども救急箱(221)
指しゃぶりが歯並びやかみ合わせに悪影響を与えることを知る人は多いと思いますが、下唇を
吸う癖=写真上段=も影響します。哺乳は心と身体を育むため、栄養面だけでなく母子の触れ合
いの場として不可欠です。指や下唇を吸う癖は、成長していく上で安心するための哺乳の代償的
行為と言われます。心理的問題と絡むことがあり、慎重な対応が求められます。
指しゃぶりは、哺乳の準備として胎内でもされています。2歳頃までは、口と歯の感覚や使い方
を学習するための生理的な行為とも考えられており、無理にやめさせる必要はないでしょう。就学
前にかけて社会性が身につき、次第に減少していきますが、昼間も頻繁に強い力で吸っていると
指に吸いダコができます。
幼児期前半でも依存が強い子や小学生になってもやめられない子は、出っ歯になったり、前歯
の上下の間に隙間ができたり、下あごの位置がずれたりすることがあります。唇が閉じにくく、話し
方や呼吸の仕方にも影響します。臨床心理士と連携するなどの対応が必要となる場合がありま
す。
下唇を吸う癖の歯並びへの影響は、吸う力で下の前歯が内側に押されて、直線状に並んで見え
るのが特徴です=写真下段。指しゃぶりは上下の前歯の間に隙間ができますが、下唇を吸う癖
は、上の前歯が下の前歯を隠してしまうほど重なる場合が多いです。頻繁に強い力で吸うと、下
唇が変形することもあります。
この癖への対応は、指しゃぶりとほとんど同じ考え方で良いですが、やめるのはなかなか難しい
ようです。子どもが成長する過程で指や下唇を吸う癖への対応法は変わっていきます。まずは、
ふれあいの場を増やすことが対応の基本です。心配な場合は、小児専門の歯科医へご相談くだ
さい。
こども医療ネットワーク会員
武元嘉彦(鹿児島大学病院小児歯科)
2歳男児:下くちびるを吸う力によって下の前歯が押されて平らに並んでいる。