上唇小帯
―近年は出血少ない手術も―
こども救急箱(222)
上唇の裏側の中央から歯ぐきに伸びるスジを上唇小帯(じょうしんしょうたい)と言います。
通常は上の前歯と離れた場所に細く、長く付いているのですが、歯と歯の間に挟まっていたり、
太くて短かったりする場合があります。
このスジが太くてかたい子どもは、上の前歯が生える頃になると、歯磨きのときに上唇を引
っ張るのを嫌がり、スジの部分に歯ブラシが当たると痛がります。このため、歯磨きが嫌いに
なってしまい、虫歯になりやすくなります。
また、歯並びにも影響して、上の前歯の間に隙間ができたり、上あごの成長を妨げたりしま
す。転んだはずみでスジが切れることや、成長とともに伸びることもありますが、そのまま変
化しなければ、さまざまな影響が出てきます。
対応としては、スジの部分に歯科の麻酔を少しだけ効かせて切ります。麻酔をしてから終わ
るまで10分から15分程度です。これまでは外科用のメスを使うことが主でしたが、近年はレ
ーザーを使うことが多くなりました。レーザーを使う利点は、出血が少ないことと縫い合わせな
くて良いことです。入院は必要ありません。
麻酔が切れて、処置後30分から1時間程度たったら、食べたり飲んだりしても大丈夫です。
小さな子どもの場合は、処置中に少し体を抑えることもあります。また、泣きすぎておう吐をし
てしまうこともありますので、やや空腹の状態が良いでしょう。
傷口は2、3日で落ち着いてきます。処置した日は、しっかり歯磨きをして口の中を清潔にし
ましょう。その後も、歯科医院で継続して経過を見てもらうのが良いでしょう。
子どもの上唇小帯が気になる方は、近くの歯医者さんで相談してみてください。
こども医療ネットワーク会員
橋口真紀子(鹿児島大学病院小児歯科)