情報氾濫社会
―経験話のうのみに注意―
こども救急箱(224)
「私はサツマイモを食べて風邪を治しました」。この見出しを見たら、どう思うでしょうか。「風
邪をひいたらサツマイモを食べよう」と思いますか。この情報が正しいかどうかは別として、情
報氾濫社会の対処を少し考えてみましょう。
ある人が風邪をひいて休んだ時に、サツマイモを食べると速やかに風邪が治ったそうです。
その人は「サツマイモを食べると風邪が治る」と思いました。風邪は数日で自然に治りますか
ら、サツマイモの風邪に対する効果はこの1人の経験からは断定できません。
それでは何人か風邪をひいた人を探して、「サツマイモを食べたか」と「風邪でどれだけ休ん
だか」を聞きました。すると、サツマイモを食べた人の方が風邪が早く治ったという結果になり
ました。そうすると「サツマイモは風邪に効く」と言えるでしょうか。
サツマイモを食べなかった人は、そもそも食欲がないくらい風邪をこじらせている人たちで、
食べた人は食欲もある元気な人ばかりでした。これではサツマイモが風邪を治したとは言え
ません。
この話でも分かるように、「これをしたらこうなる」という事を証明するのは非常に難しい事で
す。最近の情報氾濫社会では、「私の子どもはこの病気をこうして治しました」という記載を見
かけます。そんな情報をインターネットで見ると、自分の子もそうすべきだったと不安になるか
もしれません。しかし、これは1人の経験情報であり、全ての人にあてはまるわけではありま
せん。
子どもを思い、インターネットで情報収集する事は悪い事ではありませんが、その情報をど
う扱うかは非常に難しい問題です。情報は玉石混淆です。気になる時は、かかりつけ医に相
談する事をお勧めします。
こども医療ネットワーク会員
関 俊二(鹿児島大学病院小児診療センター小児科)