子ども時代の健康データ
―母子手帳など引き継ぎを―
こども救急箱(226)
小児医療に大きな変化が起きようとしています。従来の小児医療は、病気になった子どもが
クリニックを受診し、診断を受けて薬をもらって治療するという手法で発展してきました。良い
治療法や治療薬が開発されて、それまで治らなかった病気が治るようになったことを喜ぶ時
代でした。
一方、重い感染症にかからないように予防接種し、3歳児健診で尿検査をするなど、異常を
早期発見して重症化しないように検査や治療をする方法が開発されました。みんなが当然と
感じるようになり、社会的にはあまり話題になりませんが、これらの予防効果には目を見張る
ものがあります。日本が世界に誇れる制度ですので、上手に利用しない手はありません。
日本では妊娠初期に自治体で母子手帳を発行してもらい、妊婦健診を受けます。出生後は
小児科クリニックや保健センターで健診結果や予防接種記録を記載してもらい、お母さん自
身も気になったことを記入します。貴重な記録として手元に残っているはずです。
学校でも毎年検診を受けて記録されます。しかし、大人になる頃にはデータは廃棄され、成
人後にはなかなか有効利用されていません。
京都大学の川上浩司教授らの研究によると、これからは赤ちゃんのときにどのような環境で
育ち、成長したかや、かかった病気や受けた予防接種の記録によって、青壮年期から老年期
に何に注意して生活すべきかがわかる時代が来るそうです。
無事に育ったから母子手帳や学校の健康診断結果はもう必要ないと考えるのではなく、成
人になったお子さんが健康な生活を全うできることに役立つと思います。
将来のために、子どもの健康データを管理し、成人式のお祝いとしてプレゼントしましょう。
こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児医療センター)