水難事故
―防げる事故死に関心を持って―
こども救急箱(227)
1歳以上15歳未満の子どもの死亡原因が「不慮の事故」であることはよく知られています。
「不慮の事故」の中で多いのは溺死です。夏に海や川での水難事故で死亡することが事故死
の第一位になっています。幼児の風呂場での溺死も年間を通して発生していますので、溺死
は夏場だけの問題ではありませんが、夏休み期間中に年間の4割が発生し、新聞やテレビ
のニュースで水の犠牲者のことが報道されています。
国が子どもの年齢別死亡原因の統計を取りはじめたのが昭和20年代からですが、子ども
の事故死の原因はながらく交通事故だったようです。当時は交通戦争と言われ、日本で年間
1万人が交通事故で死亡していた時代ですから、子どもの事故死の半分近くが交通事故だっ
たと言われても不思議ではありません。
最近は子どもを守るためのシートベルトの着用の義務化や使いやすいチャイルドシートの
開発などもあり、交通事故による死亡者数が減少傾向にあります。
水難事故に対する対策はどうでしょうか。洋服を着てプールに飛び込む練習で、パニックに
ならず浮いて救助を待つ方法を体験すること、海や川で遊ぶときに装着するライフジャケット
を推奨する動きも見かけますが、水辺で遊ぶことの危険性の認識は十分ではないし、死亡報
道に対して鈍感になっているように感じます。
水難事故は水泳の能力に関係なく起きるので、水泳ができれば安心できるものではありま
せん。泳ぎに行ったつもりはなく、川原などでバーベキューを楽しんでいるとき、親が目を離し
た短時間に幼児が溺れることもよく報告されています。
浮き輪の代わりにライフジャケットを使って泳ぎを楽しむ方法もあるそうです。好奇心旺盛な
子どもとの海・川遊びには、クルマに乗るときのチャイルドシートと同様に、ライフジャケットを
着せてほしいと思います。
こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)