麻しん(はしか)
―ワクチン接種の確認を―
こども救急箱(228)
2015年3月、日本は世界保健機関(WHO)から「麻しん排除状態」の認定を受けました。0
7年には先進諸国から「麻しん輸出国」と呼ばれたことを思うと夢のようです。ただし「麻しん
排除状態」とは、日本固有のウイルスによる麻しん(はしか)がなくなったということです。海外
から帰国後に発症する麻しんはまだみられています。
今年7月下旬から、千葉県松戸市で9人の患者が報告されています。海外から持ち込ま
れた麻しんが、ワクチン未接種の乳幼児に広がって起きた流行です。また、東南アジアから
帰国した19歳男性が麻しん感染に気づかないまま、8月14日、千葉市の幕張メッセであった
人気外国人歌手のコンサートに参加していたことがわかりました。全国から2万5千人が詰め
かけ、感染者が各地に広がっていることが懸念されます。
麻しんは、感染から約10日後に発熱やせきで発症し、その2〜3日後から発疹がみられ
1週間続きます。発症者のせきなどで出たエーロゾル(浮遊粒子)が空気中を漂い、それを吸
い込むことで、極めて容易に感染します。麻しんは肺炎や脳炎で千人に1人が死亡する危険
な病気です。有効な治療薬はなく、麻しん・風しん混合のMRワクチンで予防するしかありま
せん。
現在MRワクチンは、定期接種として1歳(1期)と就学前(2期)に接種します。接種率の
目標は95%以上ですが、鹿児島県の1期の接種率は91・4%(14年度)と低く、全国47都
道府県中45位でした。鹿児島県の1〜5歳は約7万5千人ですから、6500人の幼児がワク
チンを受けていないことになります。
まだ1回もMRワクチンを接種していない子どもは、一刻も早く接種していただきたいと思
います。
こども医療ネットワーク会員
西 順一郎(鹿児島大学医歯学総合研究科微生物学分野)