B型肝炎ワクチン
―乳児対象に定期接種化―
こども救急箱(229)
2016年10月から、B型肝炎ワクチンが乳児を対象に定期接種化されます。B型肝炎ウイ
ルスの感染を予防するための不活化ワクチンで、生後2カ月、3カ月、7〜8カ月に3回接種し
ます。
B型肝炎ウイルスは急性肝炎を起こし、重症の劇症肝炎になると死亡することもあります。
しかし小児では急性肝炎にならずに、肝臓内にウイルスが潜伏することが多く、その後長い
経過で慢性肝炎・肝硬変になり、最終的に肝がんを発症します。従って、このワクチンはがん
を予防するワクチンとも言えます。
このウイルスは胎盤を通じて母子感染するため、これまでわが国では、妊婦が保有する場
合にだけ、生まれてきた子どもにワクチンを接種してきました。しかし、母子感染以外にも、血
液、皮膚の傷や粘膜を介して、家族内や集団保育で子どもに感染していることがわかり、す
べての子どもたちに接種する定期接種として認められました。
またB型肝炎ウイルスは性交渉でも感染します。10代後半から20代のほとんどは、B型
肝炎ウイルスに対する免疫を持っていないので、最近B型肝炎患者の中で性的接触を感染
経路とする人の割合が増加しています。性感染症としてのB型肝炎を予防するためにも、子
どものうちに免疫を付けておくことが必要です。
このワクチンは接種部位が腫れるなど一過性の副反応はありますが、重篤な副反応はほ
とんどありません。世界中の子どもたちが接種している安全性の高いワクチンですので、安
心して接種してください。
定期接種では16年4月1日以降に生まれた1歳未満の乳児が対象ですが、それ以外の子
どもも任意接種として受けることができます。近くの医療機関に問い合わせてください。
こども医療ネットワーク会員
西 順一郎(鹿児島大学医歯学総合研究科微生物学分野)