幼児期のカルシウム摂取
―代謝にビタミンDも重要―
こども救急箱(231)
病気の子どもの診療中に、日頃の食事に関する話題になることはよくあります。離乳が完了
したという理由で、乳製品を含めた乳汁(にゅうじゅう)を与えていないお母さんが意外と多く
いることに気づきました。
離乳完了は、乳汁の摂取をやめることではありません。カルシウムを一番取りやすい食品
は、母乳、人工乳、牛乳など乳汁といわれるものや乳製品です。カルシウムは骨や歯だけで
なく、筋肉や神経などの発達にも必要な塩分なので、幼児期には不足しないよう配慮する必
要があります。
2015年度版の日本人の食事摂取基準では、幼児期には一日500_c前後必要とされて
います。200_g当たり母乳は50_c、人工乳は100_c、牛乳は200_cほどのカルシ
ウムを取ることができます。
母乳中のカルシウムは少ないですが、他の乳汁と比べてとても吸収がよいので、母乳が劣
っているわけではありません。人工乳や牛乳は一日300_gくらいを目安に取ることをお勧
めします。
ただし取りすぎると乳汁だけで満腹になり、ほかの食べ物の量が減ってしまうことが多いの
で注意する必要があります。
また、カルシウムの代謝にはビタミンDも重要です。食事に含まれるビタミンDだけでは不足
しますので、日光を浴びて皮膚の中で作ることも大事です。食事でカルシウムをきちんと取っ
ていても、日光に当たらないことにより骨がもろくなった報告もあります。
日光を浴びすぎると紫外線による傷害が問題になることも知られています。15年度版の環
境省のマニュアルでは、一日に必要な日光浴の時間は東京では半袖で夏3分、長袖で冬50
分程度が目安となっています。成長に必要なカルシウムを上手に取って、丈夫な体をつくって
あげてください。
こども医療ネットワーク会員
楠生 亮(鹿児島市立病院小児科)