髄膜炎菌ワクチン
―青少年の重症感染症防ぐ―
こども救急箱(235)
小林市の高校の寮で2011年5月、5人が髄膜炎菌感染症を発症し、1年生1人が死亡す
る集団感染事例がありました。死亡した学生は早朝に食堂で倒れていたところを発見され、
病院に運ばれ治療を受けましたが、残念ながら夕方には亡くなりました。
髄膜炎菌は、海外では10〜25%の人が鼻の奥にもっています。日本では比較的少なく、1
00人に1人ぐらいです。鼻の奥にいるだけでは無症状ですが、たまたま血管に入ると血液中
で増えて、突然の発熱、嘔吐(おうと)、頭痛、意識障害や髄膜炎を起こす病原性の強い細菌
です。皮膚に出血がみられ、四肢が壊死(えし)することもあります。
髄膜炎菌は、会話やせきなどで発生する飛沫(ひまつ)によって1〜2b以内にいる人に容
易に広がります。学校の寮で集団生活をしている学生が発症するのが特徴で、15〜25歳の
青少年がかかりやすい病気です。欧米の大学の寮では毎年、集団発生がみられます。
15年5月に、髄膜炎菌感染症を予防するワクチンが日本でも発売されました。このワクチン
は、米国ではすべての子どもが11〜12歳と16〜18歳で2回接種します。日本では任意接
種であり、約2万円の接種費用がかかるため、まだ普及していません。
日本における髄膜炎菌感染症の患者数は1年間に約40人と決して多くはありませんが、発
症者の10%は適切な治療をしても死亡し、回復しても約20%は四肢切断などの後遺症が生
涯残ります。
寮生活の学生にはぜひ接種してほしいワクチンです。また、グローバル化の進む現代では、
日本の子どもたちにも重要です。ワクチンによる重い副反応はみられていません。接種につ
いては、近くの医療機関にご相談ください。
こども医療ネットワーク会員
西 順一郎
(鹿児島大学医歯学総合研究科微生物学分野)