小児科医の役割
―全身の健康をチェック―
こども救急箱(236)
小児科医が一般の人からよく聞かれる質問に、「小児科は何歳までが対象ですか」というも
のがあります。総合病院を受診する時の疑問ですが、最近は大学病院などでは紹介受診だ
けになっているので、このような質問は減りつつあります。
学生は「小児科は子どもと、子どもの病気を対象としている診療科」と学びます。社会的定
義としての子どもは15歳未満が多いようです。世界の人口統計では、15歳未満人口を年少
人口と呼び「子ども」の定義になっていますが、医学的には「成長と発達がある人」を子どもと
考えています。
成長とは身長や体重が増える量的な増加を指し、発達は機能的な成熟のこととされます。
発達は時間経過とともに新しい機能を獲得することですので、昨日までできていたことができ
なくなる老化と反対の意味です。
したがって、小児科は成長と発達を考慮しながら病気の予防と治療をすることが特徴です。
病気になることを予防する診療科であり、その分野の活動を小児保健と呼びます。保健所だ
けでなくクリニックや病院でも小児科医の仕事の柱の一つに小児保健があるのです。
小児科医は子どもを診察し、問題があると考えれば、それぞれの専門家に紹介します。そ
の専門家での結果を受けて、子どもの成長と発達をサポートしていきます。小児科を窓口に
全身の健康チェックをする診療科ですので、なんでも相談できる「かかりつけ医」を持つことが
子育てに重要な要素になります。
最近は予約制で診療するクリニックが多くなっていますし、一世代前のように外来が患者で
あふれることは少なくなりました。身近な小児科医を子育てサポーターの一人として、保護者
が上手に利用できるようになればいいと思います。
こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児医療センター)