新生児聴覚検査
―4月から公費助成開始―
こども救急箱(243)
おなかの中にいる赤ちゃんに対して、話しかけた経験はないでしょうか。「本当に聞こえてい
るのかな」なんて半信半疑の人もいるかもしれませんが、妊娠後期の胎児にはすでに聴く能
力(=聴力)を備えていることが知られています。
しかし、中には生まれつき聴力の問題を抱えている赤ちゃんがいます。そんな赤ちゃんを早
く発見するために実施されるのが、新生児聴覚検査(スクリーニング検査)です。自治体によ
っては、2017年4月から公的な検査費用の助成が始まりました。なぜ生まれたらすぐに検査
する必要があるのでしょうか。
生まれつき聴力に問題がある病気を先天性難聴と呼びます。生まれてくる赤ちゃんの千人
に1人ぐらいの割合と言われています。難聴をそのままにしておくと言葉の獲得に影響し、言
語発達の遅れ、言葉の発音の障害をきたします。ひいては学習、コミュニケーションの問題に
つながることが知られています。
続発するそのような障害を早期に発見・介入することで予防、軽減できることが研究で明ら
かになり、1990年代から欧米諸国を中心に新生児聴覚検査が導入されました。聴覚検査で
正常反応が得られなかった赤ちゃんは専門機関で精密検査をし、高度難聴と診断されれば
生後6カ月までに補聴器を着けるようにします。場合によっては人工内耳という治療も適応に
なります。
新生児聴覚検査は日本でも実施されていましたが、義務ではなく公費助成もなかったことか
ら、実施率は高くありませんでした。公的助成により、全ての赤ちゃんに新生児聴覚検査が実
施されることが期待されています。ぜひこのような取り組みを理解して、検査を受けていただ
ければと思います。
こども医療ネットワーク会員
丸山 慎介(鹿児島大学病院小児診療センター小児科)