抗菌薬
―薬剤耐性菌が国内外で拡大―
こども救急箱(245)
抗生物質などの抗菌薬は細菌感染症に効果のある大事な薬です。一方で、子どもの感染
症のほとんどを占めるウイルス感染症には全く効果がありません。これまでは抗菌薬が比較
的多く使われてきましたが、その使用方法を世界的に見直す動きがあります。抗菌薬が効か
ない薬剤耐性菌が国内外で広がっているからです。
私たちの口や腸管内にはたくさんの細菌が存在し、私たちと共生しています。細菌感染症で
はないのに抗菌薬を使用すると、そのような細菌が死滅する一方で、耐性菌だけが残って増
殖します。耐性菌は人から人に移っていきますので、自分だけでなく周りの人も耐性菌による
感染症にかかり、治療が難しくなることも起こりえます。
このような耐性菌の出現には、抗菌薬の不適切な使用が影響していることが指摘されてい
ます。また抗菌薬には、下痢や薬疹などの副作用があることも忘れてはなりません。
政府は2016年4月、薬剤耐性対策アクションプランを決定し、不必要な抗菌薬の使用量を
大きく減らす目標を立てました。今年6月には「抗微生物薬適正使用の手引き」を公開し、ウ
イルス感染症である「かぜ」や軽症の急性下痢症では抗菌薬の使用を推奨しないことを明記
しています。
医師は子どもの病気に抗菌薬が必要かをよく考えて薬を処方しますので、保護者にもぜひ
ご理解をいただきたいです。
もちろん抗菌薬が必要な細菌感染症では、十分な量をしっかり使用することが大切です。処
方された場合は、自分の判断で辞めたりせずに、指示された通りにきちんと内服させてくださ
い。抗菌薬について質問や疑問がある場合は、かかりつけの医師に相談するとよいと思いま
す。
こども医療ネットワーク会員
児玉祐一(鹿児島大学病院小児科)