なんとなく元気がない
-重症疾患の可能性も-
こども救急箱(248)
鹿児島市夜間急病センターなどで診療していると、実に多様な症状で子どもたちが受診しま
す。高熱が出て具合が悪い、嘔吐(おうと)で食事がとれない、耳が痛い、ぜんそく発作が出
ている―などがその代表例です。多くの場合は軽症で、翌日再度かかりつけ医を受診しても
らえば問題ありません。
しかし夜間急病センターでは、患児や保護者と初対面ですので、普段の様子との違いにつ
いては、保護者の話を頼りに診察し必要な対応をとります。1歳未満の乳児の場合には、慎
重な対応が必要です。診察時に嫌がるそぶりを見せて大きな声で泣いたりすると、私たちは
少しホッとします。なぜなら「大きな声を出す体力がある」ということは分かるからです。
「not doing well」という医学言葉があります。日本語では「なんとなく元気がない、なんと
なくおかしい」という意味で、小児科医にとって最も緊張する言葉の一つです。特に生後1カ月
以内の赤ちゃんの場合、緊急の治療を要する重症感染症や先天性代謝異常、手術が必要な
心疾患や消化管疾患などの重症疾患の初期症状の可能性があります。
この月齢では、わずかな治療開始の遅れが決定的に予後を変えることになるため迅速な対
処が必要です。「not doing well」が起こる理由として、血圧低下による臓器血流の減少や
低酸素・低血糖によるエネルギー不足などが考えられています。
保護者から「なんとなく元気がない、いつもと様子が違う」と言われると、私たちは最大限の
注意を払って診察を開始します。実際には簡単な判断ではありませんが、月齢や年齢によっ
て緊急度も注意点も異なりますので、普段からかかりつけ医や保健センターで情報収集して
ください。
こども医療ネットワーク会員
櫨木大祐(鹿児島大学病院小児診療センター小児科)