新年にあたって
−子育て支援親負担考慮を−
こども救急箱(251)
人生100年時代と言われるようになりましたが、2010年以降に生まれた日本人の半数は
107歳まで生きるという推計があります。もちろん、日頃から健康管理に注意し、成人期には
がん検診を受けて、適切に薬も利用するという条件付きだと思います。
現在の少子化傾向がこのまま続けば、子どもの比率は想像できないほど下がりますから、
若者が働いて高齢者を支える従来の社会バランスが崩れることは明白です。それを防ぐため
に、国策としてさまざまな子育て支援対策が練られています。しかし、刻々と変化する時代の
ニーズに合った政策立案は難しいのが現実です。
小児科では、病気になった子どもの診断と治療をすることと、予防接種や健診などの保健
業務で子育て支援をしています。予防接種の効果で重症感染症児が少なくなり、入院患児数
は激減しました。一方で、上手に社会生活になじめない子どもの割合が増加し、小児医療の
現場では、そんな子どもたちの支援に比重が移りつつあります。
子育て中のお母さんが「もう一人育てたい」と思える環境作りが重要です。政策的な子育て
支援では、病院の受診費用や保育園無償化などの経済問題が話題になりやすいですが、表
立って語られることが少ない教育過程での保護者の負担も大きいと思います。もちろん健康
問題は最優先ですが、子育て支援策はさまざまな角度から考慮されるべきです。
両親が職を持って楽に子育てをするためには、週日・休日にかかわらず学校行事に参加し
なければならないという保護者の精神的負担も考慮した方がよいと思います。経済支援も重
要ですが、金銭以外の保護者の負担軽減がなければ支援策は不十分でしょう。
こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)