小児科医は「子どもの総合医」
ー多職種で発育を見守るー
こども救急箱(255)
こどもたちは成長発達の過程で種々の問題に遭遇します。異変を感じたときに医療機関を
訪れ、15歳未満であれば多くは小児科を受診します。そこで、小児科医は「子どもの総合医」
として相談を受け、何が問題なのかを見極める努力をします。
子どもは両親から遺伝的な素質を受け継ぎ、それぞれの環境で成長発達しますから、兄弟
姉妹であっても同じではありません。人は10世代さかのぼると、2046人の祖先の遺伝子が
混ざっており、世界中でただ1人の存在です。各人に発生した健康問題の原因は千差万別で
あって当然です。
最初に相談を受けた小児科医は、問題点を解決するために何が原因かを考え、それを除
去しようとします。細菌による病気であれば抗菌薬を使い、特殊なウイルスであれば抗ウイル
ス薬を使うように、原因が一つに絞れる場合には対策は難しくありません。
しかしながら、最近多くなった発達関係の相談はそう簡単にはいきません。原因が一つであ
ることはほとんどなく、個性なのか発達障害なのかを区別する基準も、時代とともに変化しま
す。そのような複雑な問題については、病気かどうかの白黒を明らかにするのではなく、現実
に困っていることを解決できないか考えることになります。
日常生活を送る上で困っている点を整理し、その子どもにあった解決策を立てるには時間
と多くのサポーターが必要です。医師ができる役割はごく一部にすぎませんから、保健師さん
をはじめとする行政が実施する支援対策を受けられるように相談することが大切です。
小児科医、保健師、保育士、幼稚園の先生など、多方面の子育て支援関係者は、保護者と
一緒に子どもたちの健全な発育を支援したいと考えています。
こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)