そけいヘルニア
―早期の手術を奨励―
こども救急箱(28)
そけいヘルニアは、赤ちゃん三十人に一人の割合で存在するといわれており、子どもでは頻度の高い病気です。
この病気は、腹膜から連続する袋(腹膜鞘状突起)が、腹腔外へ延びたままになっており、この袋の中に腸管が
入り込むようになった状態です。女児では卵巣が入り込むこともあります。
通常、おむつ交換や入浴後の泣いたり、踏ん張ったりした際にそけい部(ももの付け根付近)が膨らんでいる
ことで気づきます。一般的には左右そけい部の片方だけが膨らみますが、両方とも膨らむこともあります。
腸管が袋の中に入り込んできても、腹腔内に容易に戻る状態であれば心配する必要はありませんが、そけい部が
膨らんでいたときは、早めに小児科か小児外科を受診してください。
注意が必要なのは、脱出した腸管が腹腔内に戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」という状態です。嵌頓状態になる
と、子どもは機嫌が悪くなり、ふくらんだ部分を触ると非常に痛がり、次第におなかが張ってきておう吐するよう
になります。
この状態を放置すると腸管の血行障害を起こし、腐った腸管を切除する緊急手術が必要になります。
そけいヘルニアは、赤ちゃんの時期であれば自然治癒することもありますが、嵌頓する危険も高いため、なるべく
早い時期に手術を受けることをお勧めします。手術は、全身麻酔をかけて三十―四十分程度で終わる比較的簡単
なものですが、小児外科専門医師がいる病院で行うことをお勧めします。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
加治 建 (鹿児島大学病院小児外科)
平成19年7月2日 南日本新聞掲載