水の事故

−心肺蘇生が救出のかぎ−

 

こども救急箱(30)

夏休みも終盤を迎えました。水遊びが大好きな子どもたちは、キャンプやプールなど水のある場所で楽しい

思い出をつくっていることでしょう。一方で、この時期は悲しい水の事故が多くなる季節でもあります。今年も

子どもの水の事故が多く報じられています。楽しい場でもこどもの動きに注意を払いたいものです。

子どもはほんのちょっとした隙におぼれてしまいますので、水遊びをさせているときなど、わが子を守るのは

親しかいないと思って眼を離さないでおきましょう。年長児は雨の後の水かさが増した川や遊泳禁止場所など危険

なところへ近づかないようにこどもによく話をしておくのも大事です。

 あまり報道されないないことですが、川や海、プール以外でも水の事故はおこります。その典型が幼児の風呂場

での溺死です。こどもは少ない水でもおぼれるので、洗濯のために浴槽に残り湯をためることで起きるのです。安

全のためにこどもが小さいうちは入浴後直ちに栓を抜くことが重要です。

 目の前でそのような水の事故がおこった場合にはどのようにしたらよいのでしょうか。助けを呼んですぐに心肺

蘇生(人工呼吸と心臓マッサージ)を行います。そうはいっても、知らない人がほとんどだと思います。しかし、

過去10年間に心肺停止後に蘇生されて鹿児島大学病院に運ばれたこどもでは、その後の治療にかかわらず、第一発

見者が蘇生を成功したこどもしか障害なく退院できていませんでした。つまり、おぼれたりしてその場にいること

の多い私達が心肺蘇生を行わないとわが子を守れないことになります。

 とはいえ、心肺蘇生法を知らない方も多いと思います。近くで心肺蘇生の講習会があるときには、ぜひ参加して

ください。また、事故の現場に遭遇したら自信がなくても蘇生を行ってください。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員

根路銘安仁 (鹿児島大学病院小児科)

平成19年8月20日 南日本新聞掲載