小臼歯の中心結節
−折れると痛みやはれ−
こども救急箱(32)
小学三―六年生くらいの子どもさんがいる方は、一度、口の中を観察してみてください。
奥歯の乳歯は生え替わり始めましたか。抜けたあとに生えてきた永久歯(小臼歯)のかみ
合わせの面に棒状か円すい状の小さな突起はありませんか。
この突起を中心結節といいます。出現率は1―4%といわれ、下あごの第二小臼歯(永久
前歯から数えて五番目の歯)に多くみられますが、人によっては上下の複数の小臼歯や、ま
れにさらに奥の大臼歯に出ることもあります。
中心結節の内部には、歯の神経(歯髄)が延びて入り込んでいることが多く、歯が生えて
くると上の歯と当たって、気づかないうちに折れてしまうことがあります。その結果歯の神経
が表面にさらされ、歯髄に感染が起こり、歯髄炎や骨膜炎、歯肉や歯槽の膿瘍(のうよう)を
引き起こし、痛んだり顔がはれたりする症状が現れることがあります。
これらの不快症状の発現時期は十代前半が大多数です。これは、中心結節のある小臼歯が生
えてくる時期と一致しています。症状が出た場合には歯髄の処置が必要ですが、生えたばかり
の歯は、歯根が未完成で治療が難しいため、処置後も歯根の変化を定期的にみる必要があります。
中心結節を見つけたら、歯科では、破折を防ぐために突起の周囲を治療用の高分子材料で埋め
て補強します。局所麻酔も必要のない比較的簡単な処置です。歯は表面からエナメル質・象牙質・
歯髄という三層構造になっていますが、補強後は象牙質と歯髄の間に第二象牙質と呼ばれる組織
が形成されるといわれており、不快症状はほとんど防ぐことができます。中心結節の破折による
不快症状は成人の例も報告がありますので、大人でも一度診てもらうとよいでしょう。
下顎の第二小臼歯の中心結節 (矢印)
NPO法人こども医療ネットワーク会員
金城幸子 (きんじょう歯科小児歯科クリニック)
9月24日 南日本新聞掲載