心臓の雑音

−異常はない場合も‐

こども救急箱(35)

乳幼児健診などで、いきなり心雑音が聞こえると言われたら、親御さんは

びっくりされると思います。実は、小児期では病気がなくても、心雑音が聞か

れることがとても多いのです。

心雑音とは本来は聞こえないはずの心臓の音が聞こえるもので、機能性

(無害性)心雑音と病的心雑音に分けられます。

前者はその名の通り、害のない雑音で、心臓は正常です。正常なのに雑音

が聞こえるのは不思議ですが、子どもの胸は薄い上に脈が速いので、心臓の

中を血液が駆け巡る音が聞こえやすいのだとされています。もちろん発熱や貧血

などで脈が速い時には、さらに聞かれやすくなります。

後者は心臓に病気があるために出る雑音です。乳幼児では、心室中隔欠損など、

心臓の中に穴が開いている病気がよく見つかります。ただ、雑音の大きさが

心臓病の重症度と比例するわけではありません。特に新生児では、重症な病気

ほど雑音はないことが多く、チアノーゼや呼吸困難、体重増加不良などから発見

されます。しかし、たとえ手術が必要な病気だったとしても、早く見つければほとん

どが治せるようになってきています。

先天性心臓病以外では、肥大型心筋症や急性心筋炎などが心雑音によって

明らかになります。特に心筋炎の場合は、雑音というよりもリズムの異常が

特徴的です。奔馬調律といい、心臓の音がドックンドックンではなく馬が走る音の

ようにパカパッ、パカパッと聞こえます。通常の風邪にしてはぐったりしていて、

吐き気やむくみが見られるときには要注意です。

雑音以外に特に症状がなく本人が元気であれば、心配いらないことが多いの

ですが、診断の際は超音波検査や心電図が決め手になります。安心のためにも、

きちんと小児科医を受診してください。

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員 

田中裕治 (鹿児島医療センター小児科)

平成19年11月19日 南日本新聞掲載