へそヘルニア(でべそ)
こども救急箱(36)
小児外科の外来診療の中で比較的多い相談が、へそに関するものです。
その中でも最も多いのがへそヘルニア(でべそ)です。これは、生後間もなく
へその緒が取れた後に、へそがとびだしてくるものです。
生後間もない時期にはまだ、へその真下の筋肉が完全に閉じていないために、
泣いたりいきんだりしておなかに圧力が加わったときに、筋肉のすきまから
腸が飛び出しくることがあります。
このすき間は、胎児期に赤ちゃんと母親をつなぐ臍(さい)血管や臍腸管、尿
膜菅などが通過していたところで、もともと弱いところです。へその緒の処置の
よしあしとは、全く関係ありません。触れると柔らかく、圧迫するとグジュグジュ
とした感触で簡単におなかに戻りますが、おなかに力が加わるとすぐに元に
戻ってしまいます。
このヘルニアは、五―十人に一人の割合でみられ、生後三カ月ころまでに
目立ってきて、ひどくなる場合は直径が三センチメートル以上にもなることが
あります。しかし全体の九割は、おなかの筋肉が発育する一歳ごろまでには
自然に治ります。
昔から、おへそをばんそうこうや五円玉などの硬貨で押さえたりする治療法が
ありますが、上手にしないとかえって飛び出している腸を傷つけるおそれが
あり、また、皮膚がかぶれたりもするので一般的にはお薦めできません。
最近ではばんそうこうが進歩してかぶれにくくなり、ばんそうこうで固定した方
が早くきれいに治るとする報告もありますが、大抵は何もしないでも自然に治ります。
小児外科の外来では、通常は病気について説明し、注意深く経過を観察します。
ただ、一―二歳を過ぎても自然に治らない場合や、ヘルニアは治ったけれども
皮膚がたるんだというようなときは、手術が必要になることがあります。小児外科
医にご相談ください。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
田原博幸(上原クリニック)
平成19年12月3日 南日本新聞掲載