メディア視聴と子育て

−上手に付き合って−

 

こども救急箱(37)

現代の日本はテレビ、ビデオ、ゲーム、携帯電話、パソコンなど各種のメディアが存在し、

大人も子どもも多くの情報にさらされています。その一方で落ち着きのない子、コミュニケーションの

苦手な子、キレやすい子などが問題となっており、メディアの子どもたちへの影響を考えることは

重要なことです。

 しかし、言葉の遅れや自閉症があたかもすべてメディアのせいのようにとらえている論評には、

いまのところ十分な科学的根拠はありません。かつては、自閉症は家族の子育ての問題から

生じると信じられていました。しかし現在は、脳の器質的障害に基づくことが明らかとなっています。

 赤ちゃんは、他人の言葉を繰り返し聞いて、気が向いたときにまねをします。その時の周囲

の反応により自分の言葉が適切であったかを判断し、言葉を獲得していきます。また、子ども

は親の考えや立ち居振る舞いをまねて人格を形成していきます。

 メディアを視聴すれば、この生身のやりとりの時間は減るでしょう。しかし、忙しい親がメディア

に子守をある程度任せられれば、家事などをこなす時間を増やすことができ、そこから生じる

精神的なゆとりは良質な親子のやりとりにつながるでしょう。たとえ短い時間であっても、子

どもの表情をよく見て言葉をしっかり聞いて穏やかに受け答えをすることが大切かもしれません。

 メディアも多くのよい面があります。現代社会では、パソコンなどを使いこなすことは重要な

能力の一つです。長い闘病生活を強いられる病気の子どもたちにはテレビゲームは強い

味方です。障害のある方にとってパソコンはよいコミュニケーションツールになります。

良質な内容のテレビ番組は豊かな知識を提供してくれます。視聴時間や内容を考えて、

メディアと上手に付き合っていくことが好ましいと思われます。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員

豊島光雄(鹿児島大学病院小児科)

2007年12月24日 南日本新聞掲載