歯の外傷           

 

こども救急箱(4)

こどもは転んで顔をぶつけることがよくあります。まずは意識がはっきりしているか、耳や鼻

から出血などがないかを確かめます。前歯で唇や舌を切ることもあり、出血や腫れがあると慌

てますが、通常の転倒による裂傷はあまりひどい状態ではなく、唾液が混じって多く出血した

ように見える場合がほとんどです。

乳歯の外傷は上あごの前歯が多く、打撲のために歯の位置がずれたり、ぐらぐら動いたり、

抜け落ちたり、歯茎にめり込んだりします。年齢が上がると歯を支える歯槽(しそう)骨がしっかり

してくるため、歯が折れることもあります。

乳歯をぶつけるとしばらくして色が黒ずむことがあります。これは歯の根の先の血管が切れて

起こります。また、乳歯が外傷を受けると、その下の永久歯の生え方に影響する場合があります。

上あごの中央の歯は七歳前後で生えますが、正常な側の歯が生えて六カ月以上たっても生えそう

にない場合は検査する方がよいでしょう。永久歯に異常があれば、歯の方向を変える、障害物を

取り除く治療などが必要です。

 永久歯の外傷は乳歯と同じく上の前歯が多く、根がまだ十分に完成していないこともあります。

歯が動いている場合は、ワイヤと歯科用接着剤で周囲の歯とともに固定し、一カ月ほど安静にして

待ちます。歯が抜けた場合は、歯を乾燥させないようにし、早く受診すれば、元の状態に戻せる

可能性があります。抜けた歯を冷たい牛乳に浸しておけば、二時間ほどたっても生着が期待できます。

歯の外傷では、受傷直後の対応と経過管理が大切です。子どもを専門に診る歯科で相談するとよい

でしょう。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク理事 

山崎要一 (鹿児島大学病院・小児歯科)

 

 

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1)外傷による脱落後   2)4年後

 

平成18529日 南日本新聞掲載