食物アレルギー
−食事方法にも注意を−
こども救急箱(41)
食物アレルギーは、乳児の有病率が5―10%に上るといわれます。アレルギーの発生には、
腸の働きが関係していると考えられています。
腸管粘膜の表面積は、大人でテニスコート一・五面ほどもあります。この粘膜面には腸管
関連リンパ組織(GALT)と呼ばれる、ヒトで最大の免疫器官があります。この粘膜表面を、約
五百種百兆個の細菌がコケのように覆っていて(腸内細菌叢(そう))、相互に勢力争いをしています。
胃腸の消化機能が未熟な乳児は、食物の分解が不十分なまま腸の粘膜面に達していると考
えられます。乳児は腸管透過性も高いので、分子が大きな食物も容易に吸収され、これが抗原
として認識される「感作」が成立します。
生体を抗原(異物)から守るのが免疫ですが、食物が異物として排除されてしまうのは困ります。
厳重な仕組みの中にも「お目こぼし(免疫寛容)」が必要です。免疫で一番重要な働きをする
リンパ球は、GALTで育成・教育されます。乳児期には、抗原や「お目こぼし」する物について
の情報が盛んに教え込まれます。GALTで間違った教え込みが行われたり、腸内細菌叢が乱
れたりしたときに食物アレルギーが発症すると考えられています。
早食いや大食い、食事中の水分摂取は、消化機能を落とすため不用意な食物抗原の発生を
招く恐れがあります。食事の時はゆっくりとよくかむことが大切です。さらに、食の乱れや清潔
すぎる環境、抗菌薬・免疫抑制薬の使用も、GALTや腸内細菌叢に悪影響を及ぼすと考えられ
ており、注意が必要です。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
中園伸一 (枕崎こどもクリニック院長)
平成20年2月18日 南日本新聞掲載