子どもの貧血
−顔色や疲れやすさに注意−
こども救急箱(44)
貧血は、全身に酸素を運搬する赤血球が少なくなっている状態です。症状は、一般的には動悸や
息切れですが、子どもがそのように訴えることはありません。
赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるときに、生後しばらくの成長に必要な鉄分をもらいます。そ
のため生後六カ月くらいまでは鉄不足にはなりませんが、六カ月以降十分な鉄分を補充しないと一歳
前後で鉄欠乏性貧血に陥ってしまいます。そのために六カ月時ごろから離乳食を開始する必要性が
あるのです。
幼児期には、牛乳の飲みすぎによる牛乳貧血もみられます。牛乳は鉄分が少ないので、牛乳ばかり
飲んで食事をおろそかにすると、成長に必要な鉄分を補給できず鉄欠乏性貧血が起こります。走りた
がらないとか、階段を数段上ってすぐに休むなどの症状が出ます。普段から一緒にいる親には顔色の
変化が分かりにくく、第三者から顔色の悪さを指摘されて受診することも多いようです。
成長してからは、思春期の女の子の鉄欠乏性貧血がよくみられます。月経が始まるのに加え、体格
が急激に変化して鉄の必要量が増え、鉄が不足がちになるためです。顔色が悪かったり、疲れやす
かったりします。この年齢では自分で症状がわかると思います。
貧血を引き起こす病気として溶血性貧血や、まれに再生不良性貧血や白血病といった難しい病気が
隠れている場合もあります。これらの貧血も進行が遅いことが多く、親にはわかりにくいものです。第三
者から「顔色が悪い」などの指摘を受けた際には医療機関で血液検査を受けることをお勧めします。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
児玉祐一 (鹿児島大学病院小児科)
4月7日南日本新聞掲載