足の変形
こども救急箱(47)
生後一年の発達は、十カ月くらいでつかまり立ち、一歳で独り歩きを始めるというのが標準的ですが、
歩き始めると足の変形が気になることがあります。子どもの足はまっすぐではなく、二歳までは
O脚気味で三―四歳はX脚と言われます。おむつをしているとO脚の評価は難しいと思いますが、
足をそろえて立った状態で一歳で三横指以上、二歳で二横指以上、膝の間があいていると変形
があると判断します。
病的なO脚の原因として代表的な病気に「くる病」があります。骨の成長にはカルシウムとリンが
重要で、それらの体への吸収にはビタミンDが必要です。一歳から二歳で見つかることの多い
くる病は、これまでは家族性の「ビタミンD抵抗性くる病」がほとんどでした。これは、生まれつき
腎臓でリンを再吸収(体に取り込むこと)することができず尿に出てしまい、血液中のリンが低下
して骨の成長を妨げてしまう病気です。しかし、最近増えているのは「ビタミンD欠乏性くる病」
です。低栄養で起こる病気のため、食生活が豊かになった現代ではほとんど見られなくなって
いましたが、最近再び増加傾向にあると報告されています。
その原因は日光不足と偏食です。ビタミンDは皮膚でも合成されるため、適度に日光を浴びな
ければビタミンD欠乏となります。また、魚やキノコ類などに多く含まれますが、偏った食事を続け
ていると摂取不足となります。幸い遺伝性のくる病と比べて適切な治療と生活改善で軽快する
ことが多いのですが、変形が強いと装具をつけて矯正が必要になる場合もあります。成長期は
適度に外で遊ばせ、偏った食事にならないように心がけましょう。
*横指(おうし) 診察のときの用語で、人差指から順に中指、薬指をそろえて長さを示す。
当然診察医によって異なるが、おおむね一横指は1.5 cmくらいと考えてよい。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
溝田美智代(鹿児島大学病院小児科)
平成20年5月26日 南日本新聞掲載