「食物アレルギーによるショック」
こども救急箱(59)
特定の食物を食べて口の周りにしっしんができてかゆくなったり、口がピリピリするといったことを
経験したことはないでしょうか。食物摂取後(多くは二時間以内)、免疫反応を介しておこる皮膚や
粘膜の発疹、咳、喘鳴、嘔吐、下痢などの症状を食物アレルギーと称し、乳児の5―10%が経験す
るという報告もあります。
その多くは軽い症状で、数十分で自然によくなりますが、中にはじんましんと同時にぜんそく発作が
でるなど、複数の臓器にわたって症状がでることがあり、これをアナフィラキシーとよびます。
さらには血圧が下がって意識を失うような危険な状態になることもあり、これをアナフィラキシーショ
ックとよんでいます(両者は同義語のように使われる場合もあります)。
食物に限らず、薬の副作用やハチに刺された時などにもアナフィラキシーショックになることがあります。
薬の副作用の場合には基本的に病院内でおきるため、医師や看護師がすぐに対応してくれます。
食べ物やハチに刺された場合のように病院外で起きた場合には、自分で薬剤を注射する方法が
あります。この薬剤はマイラン製薬のエピペン(一般名エピネフリン)という注射液です。保険診療では
ありませんので、一回分に約一万円強の費用がかかりますが、手技自体は簡単です。ペン型の本体
の先端を服の上から大腿部に強く押し付けるとバネ仕掛けの針が飛び出し、規定量を筋肉注射します。
一本が一回分です。大きな副作用はなく、命にかかわるような事態が予防できます。
食物やハチ毒でこれまでアナフィラキシーを起こしたことがある人は使用が推奨されています。処方
できる医師は登録されています。詳しくはお近くの小児科医におたずねください。
(マイライン社の説明書から)
NPO法人こども医療ネットワーク会員
樋之口洋一(総合病院鹿児島生協病院小児科)
平成20年12月1日南日本新聞掲載