急性中耳炎
こども救急箱(60)
「先生、うちの子、また中耳炎みたいなんです。どうしてこんなに繰り返すのでしょうか。難聴にはなりませんか。」
外来でよく聞かれる質問です。急性中耳炎は上咽頭(いんとう)と呼ばれる鼻の奥に感染した細菌やウイルスが、
耳管(上咽頭と耳をつないでいる管)を経由して、中耳腔(こう)に感染することで発症します。
一般的な中耳炎の原因として、子どもの耳管は大人に比べて長さが短く、角度が水平なので耳に細菌やウイルス
が入りやすい構造になっていることや、三歳ぐらいまでは免疫反応による防御機構が未熟であることが知られています。
近ごろ、特に小さい子どもの急性中耳炎が治りにくく、また繰り返す傾向があります。抗菌薬が効きにくい薬剤耐性
菌が増えていることや、集団保育の低年齢化が、急性中耳炎の繰り返しを引き起こしているようです。
急性中耳炎は、膿汁(のうじゅう)が中耳腔にたまることで音の伝わりが悪くなり、難聴を起こしていますので、通常
中耳炎が改善すると耳の聞こえも良くなります。
治療には、軽症のものは経過観察、中等症以上から抗菌薬内服や抗菌薬点耳などの方法があります。しかし、薬剤
耐性菌の出現で抗菌薬が効きにくくなっており、中耳炎の膿汁を残しておくと急性中耳炎を繰り返す原因にもなること
から、鼓膜切開により膿(うみ)を出すのがとても効果的です。鼓膜切開を行っても中耳炎がなかなか治らない場合や、
治っても度々繰り返す場合には、鼓膜換気チューブを入れる必要があるかもしれません。
一言で中耳炎と言っても自然に治る軽いものから、抗菌薬が効きにくく、中耳炎を繰り返す重症のものまでさまざま
あります。専門医の診察をうけて適切な治療を行いましょう。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
池田さやか (鹿児島大学病院小児科)
平成20年12月22日 南日本新聞掲載