指しゃぶり

 

こども救急箱(61)

赤ちゃんにとって指しゃぶりは心地よい運動であり、口の感覚の発達にもかかわるといわれています。

指しゃぶりは、母親との一体感の強化や不安解消の意味を持ち、子どもの心と行動の発達に深く関係し

ています。

三歳ごろになると一人で行動するようになり、行動範囲や興味が広がる四歳以降は不安解消の指しゃ

ぶりは減ってきます。そのため、三―四歳までは指しゃぶりを心配する必要はないでしょう。

しかし、五歳になってもやめられない子どももいます。指をしゃぶることで「気持ちよい」感覚を無意識に

求め、その繰り返しをやめられなくなるのでしょう。

指しゃぶりが長く続くと、歯並びやかみ合わせへの影響が出やすくなり、子どもの口や顔の成長に悪影

響を及ぼします。上の前歯が突き出たり(上顎前突【じょうがくぜんとつ】)、上下の前歯にすき間ができたり

(開咬【かいこう】)、上あごの幅が狭くなったり(歯列狭窄【きょうさく】)します。これらの影響で、発音時に

舌を前に出す癖が出たり、前歯で食べ物をかみ切りにくくなったりします。

指しゃぶりの癖をやめさせるには、子どもをしかるのではなく、指しゃぶりを続けるとどうなるか子どもに

理解してもらうことが大切です。

「指しゃぶりは赤ちゃんがよくするけど、今の自分に必要かな。なぜ自分はしたくなるのかな。まわりの

お友達は、なぜしていないのかな」を親子でよく話し合ってください。小さなきっかけで、指しゃぶりをやめら

れることもあります。子どもがやめたいという気持ちを持てるよう、ゆっくり進めていきましょう。

 

 

指しゃぶりが原因で起こる開咬(かいこう)。

奥歯はかんでいるのに、前歯にすき間がある

 

 

 

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員 

徳冨順子(鹿児島大学病院 小児歯科)

平成21年1月5日 南日本新聞掲載