子どもの睡眠
こども救急箱(62)
日本でも睡眠学が研究されるようになり、日常生活において子どもも大人も良質の睡眠をとることが
重要といわれるようになりました。大人の寝酒はよい睡眠を誘発しないということはよく聞きますが、子ど
もたちの眠りはどのように考えるべきでしょうか。
人の体の中で時間を調整している「体内時計」は、地球の自転で決まる「地球時計(二十四時間)」と少し
ずれていることはご存じだと思います。朝早く起きることができない小中学生の相談を受けることも多いので
すが、体内時計とのずれを例にとって説明します。
このずれを解消するのが朝の光だと言われています。朝の光は体内時計を地球時計にあわせ、それから
十二―十六時間後にメラトニンという眠りを誘発するホルモンが脳内で分泌されます。つまり、眠りたくなる
時間は朝の光を浴びる時間で決まるわけです。
子どもの成長にかかせない「成長ホルモン」は、夜に眠り始めて最初の深い眠りのときにたくさん分泌さ
れます。しかも午後十一時から午前二時ごろに熟睡していることが重要だということも分かっています。成長
ホルモンを分泌させるには午後十一時には深い眠りに入っていなければならないので、午後九時ごろには
寝床に入る必要があると考えましょう。「寝る子は育つ」ことは科学的に証明されているのです。
最近では子どものときの睡眠時間が短いと、成人になって肥満になりやすいことが確認され、小児科の世
界的医学雑誌にも掲載されました。「寝る子は育つ」ばかりではなく、問題行動が少なく、肥満にもならない、
は生活習慣病になりにくいかもしれないと推測されているようです。
赤ちゃんの眠りの質は、お母さんの妊娠末期の就寝時間と関係し、就寝時刻が早い母親から生まれた赤
ちゃんはよく眠るそうです。子どもの良質な睡眠は母親の生活習慣にゆだねられています。
NPO法人こども医療ネットワーク
理事長 河野嘉文(鹿児島大学病院小児科)
平成21年1月19日 南日本新聞掲載