「腹痛」

 

こども救急箱(66)

 「おなかがイタイ」という訴えは、小児科の診察室でごく普通に聞かれる表現の一つです。外来で多くみられる原因は

@   染性胃腸炎A便秘B食事性(食べすぎ、冷たい物のとりすぎ)―の三つです。これは小、中学生の腹痛の原因と

なることも多くあります。

 感染性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスなどによる胃腸炎が多く、食事や感染した人からウイルスが人にうつり

ます。便秘による腹痛も意外に多く、体質的な原因で繰り返しあらわれるケースや、魚の刺し身やとり刺し・レバ刺しなど

の生肉、生卵などで食中毒になることもあります。その他、頻度は高くありませんが、虫垂炎、消化性潰瘍、腫瘍など

が原因になることもあります。

 子どもが腹痛を訴えたとき、顔色が悪い、吐き気が強い、ぐったりしているなど普段の様子と明らかに異なるときは早

めに病院を受診すべきです。

 一方、痛がり方が強くなく、元気や食欲がほぼ普段どおりの場合は排便をうながしてみることをお勧めします。便が数

日出ておらず、発熱や下痢など感染性の症状に乏しい場合は、自宅でかん腸をしてもよいでしょう。便やおなら、あるい

は少々下痢気味であったとしても、排せつして腸内容をできるだけ少なくした方が、腹痛は軽くなり再び痛むことも少なく

なります。かん腸は市販の子ども用でも構いません。

 便やガスが出たあとも、腹痛がおさまらない場合は早めに医療機関を受診しましょう。主に二歳までの子どもにみられる

閉塞の一種である、腸重積症の可能性も考えられます。かん腸などでイチゴジャムのような血便が出るのが特徴です。

 小さな子どもの場合、胸や背中の痛み、時には頭痛なども全部「おなかがイタイ」という訴えになることがありますので、

腹痛や下痢などのおなかの症状以外にも咳は出ないか、息苦しそうでないか、吐き気はないかなどに注意して観察しましょう。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員 

徳田浩一(鹿児島大学病院小児科)

 

 

 

 
3月23日南日本新聞掲載