「むし歯」
こども救急箱(68)
赤ちゃんが母乳で育つことは赤ちゃんとお母さんにとって最も自然なことで、母乳育児は広く推奨されています。
母乳には栄養学的、免疫学的、精神学的に利点が多く、特に遊び飲みをしながら眠ることが子どもの精神的安定に
効果があることが分かっています。
しかし一方で、母乳育児とむし歯との関係も指摘されています。母乳育児を推進する上でも、母乳の正しい与え方が
重要になってきます。
多くの子どもの場合、歯が生えるとすぐにむし歯の原因菌であるミュータンス菌が歯の表面で増え始めます。ミュー
タンス菌は食べた残りかす、中でも炭水化物や糖分を分解して酸を作り出し、この酸が歯の表面を溶かすことでむし歯
になってしまいます。
母乳そのものはむし歯の直接の原因ではありませんが、お口のケアが悪く、食べた物の残りかすをそのままにして
授乳を続けていると、むし歯ができる危険性がとても高くなります。
子どもをむし歯にしないためには『お口のケア』が大切です。まず上の前歯が生えたら、離乳食後に指に巻いたガーゼ
や綿棒で歯の表面を拭き取りましょう。一歳過ぎになれば離乳食後に歯を丁寧に磨くようにしましょう。
毎食後に磨くのが理想ですが、難しいようなら夕食後にしっかり磨き、他の食事時は水またはお茶を飲ませ、すすぎの
効果を得てください。一歳以降も母乳を与えている場合、安心して母乳育児を続けるためにも、小児歯科の専門医から
適切なサポートを受けることをお勧めします。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
長谷川大子(鹿児島大学病院 小児歯科)
4月27日南日本新聞掲載