乳歯のむし歯を放っておくと…
こども救急箱(7)
『むし歯で顔が腫れることがありますか?』『むし歯で入院することがありますか?』治療に来られている
お子様の保護者の方から質問を受けたことがあります。どちらも答えは“YES”です。乳歯のむし歯を治療せず
に放っておくと、短期間でむし歯が大きくなるだけでなく、歯の痛みや発熱、顔が腫れるなどの症状が出ること
があります。さらに、顔が腫れて口が開けにくくなると、十分な水分・栄養の補給ができないことがあるので注意
が必要です。場合によっては入院しなくてはならないこともあります。これはむし歯が進行して歯の神経が腐って
しまい、歯の根元に膿がたまって歯を支えるあごまで炎症が拡がってしまったために起こります。こうなると歯
の治療だけでなく、抗生物質の内服や点滴が必要になります。
また、乳歯の根元には永久歯の芽ができています。乳歯のむし歯が進行して根元に膿がたまると、根元にある
永久歯の芽まで膿まみれになって、健康な永久歯ができないこともあります。
人の一生の中で乳歯を使う期間は10年くらいですが、この10年間に乳歯はたくさんの大切な役割を果たします。
「ものをかむ」という歯本来の役割のほかに、「ことばの発達を助ける」「あごや体の発育を助ける」など、成長に
関わる大切な働きがあります。さらに重要なのが、永久歯を正しく導く役割です。永久歯は、乳歯を道標として生
えかわります。
乳歯をむし歯から守り、健康な永久歯を導くために、規則正しい生活習慣、食習慣、歯みがき習慣を身につけま
しょう。かかりつけの小児科医があるように、かかりつけの小児歯科医をみつけておくことも大切です。むし歯に
なってから行くのではなく、むし歯を予防するために定期的に診てもらいましょう。
NPO法人こども医療ネットワーク会員 長谷川大子
(鹿児島大学病院 小児歯科)
(平成18年7月17日 南日本新聞掲載)