こども救急箱(70)
RSウイルスとは乳幼児の冬期の呼吸器感染症の原因となる主要なウイルスです。前回、紹介されたように喘息性気管支炎を
起こす原因ウイルスの中でも多いウイルスの一つです。乳児はRSウイルス感染症がよくなった後にも、長期にわたって肺の機能
に異常を残し、喘鳴(ゼーゼーとした呼吸)や喘息の頻度が高くなるといわれています。
RSウイルスは鼻汁やたんなどに多量に含まれており、接触感染および飛まつ感染で感染します。しばしば兄弟から下の弟や妹
へ感染し、4〜5日の潜伏期を経て、水様性鼻汁、せきがみられます。感染が上気道(鼻粘膜)から経気道的にどこまで波及するか
によって、急性気管支炎、咽頭気管気管支炎、細気管支炎(非常に細い部分の気管支)、そして肺炎と病像が変わります。年長児の
多くは鼻汁やせきのみで終わることも多く軽症ですが、乳幼児は気管の機能が未熟であるため、細気管支まで感染が及び、肺炎を
起こし重症化しやすく10〜40%は入院し酸素投与などの治療が必要となります。
具体的な症状としては、生後6カ月以内の乳児(特に3カ月以内)で、呼吸が苦しそうで呼吸がはやい、息を吸う時にろっ骨が浮き
出るようになる、元気がなく顔色が悪い、授乳がつらそうになる、飲めないといった症状がみられた時は入院治療の適応となります。
また、乳児期早期ではしばしば無呼吸発作をきたします。発熱を伴わないことも多く、喘鳴やせきより早く無呼吸発作を起こすため、
乳児期で水様性鼻汁とゼロゼロとたんの引っかかる音が聞かれる時には、早めに小児科を受診してください。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
石川珠代(鹿児島市医師会病院小児科)
平成21年5月25日 南日本新聞掲載