3次喫煙
こども救急箱(72)
世界的にその権威を認められている米国の小児科専門誌に「3次喫煙の健康影響について考えると家庭での禁煙が進む」という論文が出ました。
1次喫煙は従来、能動喫煙、2次喫煙は受動喫煙と訳されてきました。受動喫煙は、レストランやスナックなどで喫煙者の吸っている煙を非喫煙者が
無理やり吸わされている状況や、喫煙者がその場にいなくても煙がついた車のシートやカーテンなどからたばこの煙を吸わされている場合の2つの
タイプが考えられていました。
この論文は、喫煙者がその場にいないか、喫煙していないにも関わらずたばこの煙を吸ってしまうことを3次喫煙と定義づけたのです。ある人は2次
喫煙を直接受動喫煙、3次喫煙を間接受動喫煙と命名しました。筆者は「見えない煙」と言いたいと思います。
ニコチンは常温で油状であり、嫌なにおいのする揮発性の液体です。ナス科の植物であるたばこの葉を虫に食べられないようにする植物毒がニコ
チンなのです。高温でガス化したニコチンは、煙が触れたところで油のようにくっついて徐々に揮発します。またたばこに含まれる微粒子は床に積もる
ため、床ではいはいしている赤ちゃんが、その被害を最も受けやすくなります。
外で吸っても、喫煙者の肺に残ったニコチン、髪の毛や服に付いたニコチン、外の空気に含まれるニコチンと、見えない煙は赤ちゃんの健康を害し
ます。たばこをやめない限り、赤ちゃんにたばこの煙を吸わせることになるのです。喫煙は常時子どもに接する大人がとるべき習慣ではありません。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
野田 隆 (のだ小児科医院)
平成21年6月29日 南日本新聞掲載