かむ習慣

 

あんしん救急箱(73)

健診などで「うまくかめない、飲み込めない」という相談は珍しくありません。赤ちゃんはほ乳を経て、生後6カ月ごろから形あるものを与えられ、

かんだり飲み込んだりし始めます。出生時に備わっていたほ乳の動作が主に反射で行われるのに対し、食べる動作には学び、覚えることが必要

です。この時期の口のまわりの成長は歯のはえる時期など、個人差があるため、ほかの子どもと一概に比較することはできません。

保育園や幼稚園に通うようになると、友達や先生と一緒に食事することを通して、多くのことを学び、覚えることになります。ほとんどの子どもは

かんだり、飲み込んだりすること関するいろいろな問題は、この過程で自然に、そして速やかに解決に向かうようです。

一方で、これらの働きに遅れがある子どもも見られます。ほとんどの保護者は個々の子どもの問題ととらえているようですが、必ずしもそうでは

ありません。「かみたくない、飲み込みたくない」というサインである場合もあります。生活リズムや、食事の時間や量、間食などが左右する食欲、

テレビの有無など食卓の環境などは、子どもがかんだり飲み込んだりできない理由に直接関与しているものと考えられます。

また、保護者の精神状態や過干渉な養育態度も要因となるようです。子どもの食に関する問題は、学び、覚える場である家庭がそのまま反映

されると言っても過言ではありません。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク 会員 

早崎治明(鹿児島大学病院小児歯科)

平成21年7月20日南日本新聞掲載