反抗期

 

こども救急箱(75)

おしゃべりを始める1歳半くらいの子どもに「好き?」と聞くと好きと言い、直後に「嫌?」と聞くと嫌と言います。

もっとおしゃべりが上手になる2〜3歳くらいになると「好き?」というと、にこにこしながら好きじゃないと言ったりし

ます。「え、好きじゃないの?」と聞くと面白がって好きじゃないと繰り返します。

 これは自我が目覚め、自分以外の人に興味をもつようになり、言葉遊びをしながらやりとりを経験しているのです。

この時期は要求を通そうとして泣き、目的を達するまで決して泣きやみません。「もういい加減にしなさい」とつい言

ってしまいますが、これも自分を認めてほしいという自我の目覚めからくるものでしょう。

 反抗の程度には個人差があります。何度か言い聞かせれば分かってくれる子どももいれば、頑として受け入れない

子どももいます。いずれにしろ、反抗期は子どもにとって大切な成長過程です。

 また、大人からみれば単なるわがままにしかみえませんが、自主性の現れでもあります。一概に「反抗=悪いこと」

と決めつけず、時間に余裕があるときは待つ姿勢も必要です。

 最近、新聞などで2〜3歳児の子どもの虐待の報道をよく目にします。虐待に至るにはさまざまな理由があって他人

には評価しにくいのですが、親が精神的にゆとりをもって子どもに接することが基本です。そのためには祖父母をはじめ、

周囲の支援が欠かせません。周囲に見かける反抗期の子どもを社会の財産と思ってかわいがり、指導できるような社会

であってほしいと思います。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員 

楠生 亮(鹿児島市立病院小児科)

平成21年8月17日南日本新聞掲載