妊娠中のダイエット
こども救急箱(78)
1980年に生まれた日本の男児の平均出生時体重は3230cでしたが、2005年には3050cになりました。
2500c未満の低出生体重児の割合は、5%から10%に増加しています。いろいろな条件が重なってこのような
変化が表れていると思いますが、赤ちゃんは小さく産んで大きく育てるという考え方でよいのでしょうか。
若い女性のやせ願望や妊娠期間中の極度のダイエットが多くなり、赤ちゃんへの悪影響が明らかになってきました。
エピジェネティクス(後成学)という学問の研究成果によると、胎盤を介した母体から胎児への栄養供給量と生まれて
からの体質には大きな関係があります。妊娠中に摂取カロリーが低いと胎児がエネルギー不足になり、エネルギー
倹約型の赤ちゃんとなって生まれます。
エネルギー倹約体質は生まれた後も持続するため、赤ちゃんがエネルギー過剰摂取や運動不足になりやすく、
肥満や糖尿病、高血圧症など生活習慣病の危険群になると考えられています。DNA配列以外にも体質を決める要素
となることが判明したのです。
胎児プログラミングという概念として研究されており、妊婦の健康管理が生まれてくる赤ちゃんの将来に大きな影響
を与える例です。厚生労働省が推奨する妊娠中の体重増加量は、体重(`)を身長(b)の2乗で割った体格指数(BMI)
18・5以下のやせている妊婦で9・12`です。妊娠中の若いお母さん、赤ちゃんのために無理なダイエットの継続は
しないでください。
もちろん、あんしん救急箱でも繰り返し取り上げているように、妊婦の習慣の中で赤ちゃんに最も悪いのが喫煙や
アルコールであることは言うまでもありません。
NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児科)
平成21年10月12日 南日本新聞掲載