子どもたちをタバコから守る
こども救急箱(8)
四百年前にヨーロッパに伝えられたたばこが、もし現代日本に伝えられたとしたら、社会にどのような
形で受け入れられるのでしょうか? その毒性が明らかになっている現代であれば、少なくとも公衆の
面前で扱われることはなかったと思います。情報がなかったがゆえに今日のたばこをめぐる諸問題が発生
していると考えられます。
たばこは自己責任で吸っている大人にのみ害があるのではなく、何も責任がない子どもたちに大きな悪
影響を及ぼしています。子どもは大人の吸っている煙を吸うことによって喘息発作に悩まされたり、中耳
炎を繰り返したりすることが分かっています。
たばこあるいは吸い殻を口の中へ入れた場合や、誤飲したために小児科に連れてこられる子どもは後を
絶ちません。二〇〇五年の日本中毒情報センターの統計によると、五歳以下のたばこ誤飲の相談が約二千
七百件と報告されています。
種類にもよりますが、一般的に乾いたたばこを少量(乳幼児で二�未満)食べたときや食べた後に大部分
吐いたことが確認できる場合には、様子観察で大丈夫といわれます。ただし、水に浸っていたたばこやその
液を飲んだ場合にはすぐに受診が必要です。現実にはどのような状況で口の中へ入れたか推測できない場合
も多く、救急外来を受診しなければならないようです。いずれにせよ大人が吸わなければ、もし吸ってもき
ちんと管理していれば発生しない事故です。
一本のたばこを吸うと、ドラム缶五百本分の空気を汚すというデータもあります。四畳半で八部屋、六畳
で六部屋分です。少なくとも分別のある大人は、子どもの目の前でたばこを吸わないことが将来を支える子
どもたちへの最低限のマナーではないでしょうか?
NPO法人こども医療ネットワーク会員 野田隆(のだ小児科医院)
(平成18年7月31日 南日本新聞掲載)