ヒブワクチン

 

こども救急箱(82)

人に感染した菌はさまざまな臓器で増殖して病気を引き起こします。脳やせき髄など中枢

神経の感染症である細菌性髄膜炎は脳を包む髄膜とそのすき間を満たす髄液に菌が侵入し

て増殖した状態です。鹿児島県内でも年間1020人の子どもたちに発生しています。

細菌性髄膜炎は急速に進行する重い病気としてよく知られ、約15%が精神発達遅滞

や四肢まひ、二次性てんかんなどの後遺症を残し、5%近くが死亡しています。治療が発達

した現在も合併症を伴う重症感染症であることに変わりはありません。

 子どもの細菌性髄膜炎の原因となる菌で、特に頻度が高いのがインフルエンザ菌b型(ヒブ)

です。欧米ではヒブによる髄膜炎予防のため20年以上も前からワクチン接種が開始され、

大きな成果をあげています。

 日本でもようやく2008年12月から使用できるようになり、現在、生後2カ月以上、5歳未

満の子どもを対象として任意接種として実施されています。1歳前後で発病する子どもが最

も多いことから、接種スケジュールは、通常6カ月までに4〜8週の間隔をおいて3回と、1

歳すぎごろに1回の計4回となっています(開始年齢により接種回数は違ってきます)。

 長期の使用経験のある海外では、ワクチンの有効性とともに、高い安全性が確認されて

います。県内では全国に先駆けて鹿児島市で公費負担が実施され、今年からは伊佐市と曽

於市でも行われています。

 健康管理の基本は何といっても予防です。重症になるヒブ髄膜炎を防ぐため、できるだけ多

くの子どもたちにヒブワクチンの接種を受けてほしいと思います。

 ヒブワクチンは輸入製品のため残念ながら十分量が確保されておらず、不足がちです。接種

に関するお問い合わせや予約については、お近くの小児科にご相談ください。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員 

徳田浩一(鹿児島大学病院小児科)

平成21年12月21日 南日本新聞掲載