腸重積症

 

こども救急箱(84)

子供が吐いたり、おなかを痛がる時は胃腸炎や便秘の場合がほとんどですが、気をつけなければならないものに腸重積症があります。

腸が腸にはまり込んで起こる病気です。発症する原因は不明ですが、ウイルス感染症との関連も報告もあり、憩室(腸にできる袋)や

ポリープなどが原因となる場合もあります。生後6カ月〜3歳に起こりやすいと言われています。

主な症状は嘔吐、イチゴゼリー状の血便、間欠的腹痛などです。しかし、必ずしもこれらのすべての症状を満たすわけではありません。

例えば、嘔吐はなくても赤ちゃんがミルク嫌がって飲まないという場合もあります。腹痛もずっと続くわけではないので、急に不機嫌になった

かと思えば、けろっとして遊んだりするので病気だと気付かないことも多いです。血便は、イチゴゼリーのようなどろっとした便が自然に出る

こともありますが、小児科受診時にかん腸で初めて血便を確認し、診断に至る場合も多いです。

治療法には、はまり込んだ腸を元通りにするために高圧かん腸という特殊なかん腸を行います。腸が元に戻れば、腹痛は改善しすぐに

ミルクなどを飲めるようになることがほとんどです。

腸重積が発症してから24〜48時間以上経過すると高圧かん腸では腸が元に戻らないこともあり、その場合は外科的に腸を戻す必要が

あります。また、腸を元に戻しても数カ月後に再発することもあります。

自分の意思表示ができない赤ちゃんは症状が非常に分かりにくいものです。@おなかがすいているはずなのに何度試してもミルクを飲もう

としないA飲んでも吐くB機嫌が悪く元気がない―という場合は早めに小児科医の診察を受けましょう。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員 

荒田道子(鹿児島大学病院小児科)

 

 
平成22年2月1日 南日本新聞掲載