不正咬合
こども救急箱(86)
歯並びがでこぼこだったり、受け口だったり、上と下の歯がうまくかみ合わないなどの状態を「不正咬合」といいます。治療は
いつから始めたらいいのか、そもそも治療自体が必要かどうかなど、保護者にとって判断に迷うところでしょう。
成長発育期に治療を行う場合は、食べ物をかむ機能の健全な発育の促進や、成長後の好ましい歯並びとかみ合わせを目指
すなど、口の機能全体の安定につながるものでなければなりません。
こうした点で、特に早期に治療が望まれる不正咬合の一つに、奥歯の交叉咬合があります。上下の奥歯をかみ合わせたときに、
上下歯並びの正中が横にずれているような状態をいい、指しゃぶりなどの癖がある幼児にときどきみられます。 成長期に放置し
たままだと、食べ物をかむ機能やあごの正常な発育に少なからぬ影響が生じると考えられています。自然に治ることはまれで、
通常は口の中に歯を動かす装置を入れて治療を行います。
早期治療の必要性が高くても、治療を受ける子どもが治療について理解できない低年齢であったり、治療に前向きでなかったり、
あるいは早期治療に対する家族の姿勢が定まらない場合には、治療の開始時期としては適切ではありません。低年齢児の不正
咬合の状態から、将来の成長変化を予測し、適切な時期に適切な治療を行うためには、小児期の成長発育をよく理解したかかり
つけ歯科を受診することが大切です。
継続的な口の健康管理の中で、現時点で必要なこと、可能なこと、その内容と期間、費用、治療そのもののリスクなどを十分に
検討された上で、いつ不正咬合の治療を始めればよいのか相談されることをお勧めします。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
石谷徳人(イシタニ小児・矯正歯科クリニック)
平成22年3月8日 南日本新聞掲載